『エンジニアのためのマネジメントキャリアパス』はなりたてのテックリードが読んで安心できる良い本

エンジニアのためのマネジメントキャリアパス ―テックリードからCTOまでマネジメントスキル向上ガイド

エンジニアのためのマネジメントキャリアパス ―テックリードからCTOまでマネジメントスキル向上ガイド

各所で良いという評判を聞いており、ちょうど先々週くらいに京都に台風が来るので自宅に引っ込み続けられるように急いで買った。Amazonでは売り切れていたのでリアル書店で買った。

読もうと思ったきっかけ

テックリードというロールを拝命して1年と数ヶ月が経つ。なんとなく今までの仕事と違うので知識の地図を広げたほうがいい気がするな、と思っていた。
現在所属する組織であるはてなとしてはテックリードはマネージャーではなくアプリケーションエンジニアの専門性を高めていく方向性の先にあるロールとされているけれど、マネジメント、とりわけプロジェクトマネジメントについては必要とされるなという感触をおぼえた。

見積もりとか計画作りとか、そういう分野は別途学んではいるが、しっくりこないというか要素技術だけ学んでおり有機的に繋がらず身に付いたかどうか怪しいので、シナプスを繋げたいなーとかねがね思っていた。
ソフトウェア技術では、最高のソフトウェアを作るためには、たとえばいつでも素早くリリースできる技術 (Continuous Delivery) があることで平均障害回復時間の改善に繋がったりリリースフローが滅びるリスクを下げられるとか、たとえば関心を分離する方法論 (layered architecture, clean architecture, etc.) があるとか、そういう咀嚼ができているからこそ「こういった分野の学習は、こういう時に役立つ (ので今やったほうがいい)」とか知っているけれど、マネジメントに関してはそうではない。
一言でいうと「テックリードはなぜプロジェクトマネジメントをやったほうがいいのか」「どれくらいできるといいのか」みたいなのが知りたい、というかんじかも。

そこでこの本が登場し、目次を読むとよさそうだった。で、実際に読んだところ良かった。

学び

最近テックリードないしマネジメントを学びはじめたけれど何をしたらいいかわからないや、という人はこれを読むととっかかりが見つかりそう。少なくとも自分は見つけられた。

まずこの本は「エンジニア (技術職) のために」というコンセプトなので、マネジメントについて本格的に書いてあるというより、エンジニアの視点・価値観に近いところからアプローチしてあるのがよい。
最初はマネジメントされる側の視点から始まって、メンター、テックリード、チームマネージャー……という風にマネジメントする対象がより大きくなっていくという構成が丁寧。

抽象的な精神論ばかりではなく、たとえば「提案を断る時にはいきなり『いいえ』『できません』と言うのではなく『なるほど、そのためにはこういうものが必要ですね』といった風に実現のために必要な対価を求める」といった具体的なテクニックが書いてあって、ほどよいバランス感だと思う。
実際に使える・使うかよりも、こういう今の自分でも実践できそうな情報が盛り込まれているかどうかで未知の分野について書かれた記述を信用していいか・地に足が付いているかを判断できるのが良い。

さらに自分が所属している組織にはチーフエンジニアやシニアエンジニアといった職位があるが、そういった同僚を他者評価する時にも「期待」が設定しやすくていいと思う。
つまり、まだ自分が経験していないポジションに求められるスキルや役割への理解が進みやすいということ。各章の冒頭に筆者が書いたとても丁寧なジョブディスクリプションがあり、通り一辺倒じゃない様々な働きについて述べられている。
(もちろんこれはあくまで一例であって、自分たちの組織において求めることを自分たちの言葉で書くのが良いし、そうすべきだと思う)

ジョブディスクリプションを書くのはこれからテックリードないしそういったポジションを目指すエンジニアにとっても意義がありそうなので、早速やろうという

後半のCTOや経営メンバーの章はだいぶ高度で「へー」というかんじでわりと流した。こういうことを考えているのだな、という知識がついたのはよい。

一方、マネジメントの各技術については別途専門の本を読むのがよさそうに思う。