小学生のころにレンズ付きフィルムを少し使ったくらいで、カメラといえばデジタルの自分にとって長らく写真は、親に言われるまま渋々と学校行事のスナップ写真を注文して買うだけのものだった。
高校生のころ、京都や東京で淡々と、あるいは鬱屈と撮った写真をぽつりと載せ続ける Web サイトを見続けて、いつか自分もこの人と同じものを見たいと感じて調べた結果、デジタル一眼レフカメラの存在を知り貯金をはじめた。
いろいろなカメラに目移りしつつも、直線が多く精悍なかたちに惹かれて PENTAX K-7 を選んだ。
真冬の北海道は屋外と屋内の温度差が激しくカメラには過酷な環境であるにも関わらず毎日裸で持ち出してはなんでもない風景を撮り続けた。
進学で大阪に引っ越してからもそれは変わらず、新生活に寄せていた期待は裏切られ友人もできず暗い気持ちで過ごす毎日を捉え続けたのはPENTAX K-7だった。
このカメラに足を引っ張られたことは一度もなく、雨が降ろうと雪が降ろうと真夏の炎天下だろうと、どれだけ厳しくても静かに風景を捉えつづけてくれた。先に根を上げるのはきまって自分。
そのあと PENTAX K-3 に買い替えてからは防湿庫にいることが多かったが、とうとう今年の春、手元を離れていった。
代わりにやってきたのは PENTAX K-1. PENTAX K-7 から変わらず手に馴染み、今年も、これからもきっと自分が死ぬまでシャッターを切り続けるでしょう。いつも先に根を上げてしまうのは自分だったから。